理解しあえない

5,「他人」とは、本質的に理解し合えないものです。

人の価値観とは、その人の経験と先祖から引き継がれた経験値で創られています。そして、誰しも経験値は異なっているので、人それぞれ価値観も違います。私たちの社会は、価値観の違う者が集まって集団生活を営んでおり、価値観の違う者同士が、助け合い、支え合いながら成り立っています。

他人の価値観は、その人の経験値に基づいて出来上がったもので、その人と同じ経験をしなければ、同じ価値観になる事はありません。即ち、他人の価値観を理解する事など出来ないのです。トマトを美味しいと感じる人には、トマトが不味いと感じる感覚が解らないという事です。

しかし、私たちの社会には、「他人と理解し合う事が良い事」とする風潮があります。そして、どんな人も「良い事」をし続けなければならないという教育を受けています。その影響で、多くの人が「他人と理解し合える」と思い込んでいるのです。

よくよく考えてみて下さい。私たちの社会は、秩序を保つ為に善悪の判断を強いており、しかも、その善悪は自分たちに都合よく定められている。私たちの欲望が満たされる事が「正しい事」であり「善」というルールの下、人それぞれ価値観は違うのです。即ち、人それぞれ「善悪」の判断基準が異なり、しかも、私たちは「理解し合える」と、そう思い込んでいます。

初めから「理解し合えない」ように創られた私たちが「理解し合える」と、そう思い込んでいれば、自分の価値観を理解してもらおうと他人と接する事になります。「自分を理解して欲し」と、強くそう思えば思うほど、自分を理解してもらえない事にストレスを感じるようになるでしょう。「どうして、私を理解してもらえないのか?」と、悩みながら過ごす事になる人もいるでしょう。逆に自分を理解してもらえない事に憤りを感じ「どうして、そんな事も解らないんだ!」「アホか!」「バカか!」と、自分の感情をぶちまける人もいるでしょう。

私たちは、初めから理解し合えないように創られて生まれてきているのにです。

 

私たちの社会は、理解し合えない者同士が、集まって生活をしているのですが、「人と人とが理解し合える」と、そう思う事により争いが生じます。争いをなくし穏やかに過ごす為には、自分と違う価値観の人を認めて受け入れる事により、助け合い、支え合う、しかないのです。

「人と人とは、理解し合える」などとキレイ事を信じるより、初めから理解し合えないと思い、常に相手の価値観を認め、受け入れ、寄り添うように過ごした方が、人間関係はうまく行くでしょう。